「…蝶子さん?しんどいん?」

着替えると言ったきり部屋から出てこなくなったことに心配してか、ドアの向こうから遠慮がちな声が聞こえる。

プライベートなことに気を使ってくれている、それを望んだのは私なのに。
無理やりでもドアを開けて、私を見てほしい。姿見に映るのは、自分でもぞっとするくらいの「女」を醸し出していた。

そっと内からドアを開けると、わずかに驚いたような顔があった。

「…ううん、何でもないのよ」

ケイが何か言う前に、じっと彼を見据えた。
真っ赤な瞳がわずかに細められる。

…ねえ、わかっているんでしょう、私が今、何を考えているか。
そして誰を想って、こんなに濡れた顔をしているのか。

「ケイ…」

白く華奢な、けど男の腕が伸びてきた。