「蝶子さんおかえりー」


今日は早かってんねえ、と口にしながらケイが視線を向ける。

いつもと変わらない言葉、それなのに。
どくん、と心臓が波打った気がした。

「…そう?着替えてくるわね。」

部屋に駆け込み、途端に座り込む。

ショックを隠し切れない。
何に、といえば、期待してしまった自分に。

…ケイは何も聞かないし、知ろうともしない。

初めはその距離がやりやすかったし、
あくまで「同居人」の私たちの間には、たわいない会話はあっても、探り合うようなことはしないしされなくない。

なのに、今、聞いてほしいと思った

どこに行ってたの?
何してたの?
誰と会ってたの?
誰に抱かれてたの?

「は…馬鹿なの…」

他の男に抱かれるのが耐えられなくなっているくらい、まだこんな感情になれるなんて自分でも思ってなかった。

独占欲でも承認欲求でもない、けれど。

彼に、私を知ってほしいと思った。