シャワーから出ると、男はすでに身支度を整えていた。

「…もう帰るの?」
「ああ、さっき家内から電話があってな、久しぶりに家族で夕食を取ることになった。」

たまの家族サービスだ、わかってくれ

そう言うように男がひとつキスを落として部屋を出た。

見送ったあと、未だ残り香に包まれているベッドに腰かけ、またため息をつく

…別にずっといてもらいたかったわけじゃない。
けれどムッとしてしまったのは、1人になってしまうから。

男のおかげで悠々自適に暮らせているのに、わがままを言っている自覚はある。
それにもうあの男に燃え上がるような情はとっくになくなった。

なのにこんなに1人が寂しいと感じてしまう。情があるから離れるのが寂しいのではなく、単純に1人で過ごさなければならないのが。

『ストレス溜まってるん?膝枕くらいしたろか?』

悪戯そうに笑うケイ、からかいこそすれど、私を気遣ってくれているのだと感じた。
何もしてくれなくて構わない、そばにいてくれるだけでいい。

「…帰りましょう」

待っていてくれているはずの彼の元へ。