「2人とも、座りなさい」
「はい」
2人は家元の側に座った。
ただならぬ雰囲気に、奏大は何を言われるか心配になり、密かに緊張しているようであった。
しかし、そんな奏大の様子にも、ここにいる人は全く気付いていなかった。
「奏大くん。昨日も伝えたと思うが、私は大樹の息子である君との結婚なら反対はしない。しかし、もし花菜が嫌がっていたり、悲しむようなことがあるのであれば、この結婚には反対だ」
「はい。そんなことがないようにします。約束します」
「花菜はどうだ?」
「パパありがとう。私なら大丈夫だよ」
「そうか。それなら安心した。なぁ、律」
「はい。…家元、そろそろ」
「そうだな。せっかく茶室に来たんだ、律にお茶を点ててもらいなさい。私はそろそろ会合があるから失礼するよ」
そう言うと、家元は席を立ち、出掛けてしまった。
家元が出て行くと、奏大は花菜や律に気づかれないように、ホッと溜息をついた。

