この時の3人の会話がきちんと聞こえていたのであれば、花菜は悩まずにいられたのかもしれないが、運命とは残酷なものだ。
この日が奏大と花菜の運命の分岐点となったのであった。
ドアをノックする音が聞こえてきたかと思うと、花菜が遠慮がちに部屋の中へと入ってきた。
「あ、花菜ちん!可愛い。やっぱり、着物を着ると雰囲気変わるね」
「そうですか?」
「なぁ、奏大」
「あぁ…。ほら、家元が待ってるんだろ?行くか」
「はい…」
奏大は花菜と一緒に茶室へと向かった。
茶室に行くと、花菜の父親である雨宮流家元と、律が待っていた。

