恋愛論




きっとまだ川崎さんに彼氏がいない頃の。


「そんなときに早紀に会った」


由宇が一瞬あたしを見た。


「早紀に言われて、おれ本当に早紀を利用しようとしてた」


「あたしが言いだした事じゃん」


あたしが咄嗟に言ったけど、由宇は首を振った。


「早紀が本当はちゃんとした恋愛したがってるの知ってたのに」


由宇が下を向いたまま続ける。


「早紀が自棄になってるの気付いてたのに。自分の事ばっかりで…最低だよ」


そう言って由宇は黙る。


あたしもただ黙って、次の由宇の言葉を待つしかなかった。


部屋に入る光が徐々に少なくなってくる。


もうすぐ夜が来るんだ。