ピアスの数は傷の数



いつもと変わらない日、
電車と共に揺れながら、携帯を取り出し
音楽を大音量に上げる。

何も聴こえない。
目の前に座ってるおじさん二人の
どうでもいい会話もこれでもう聞かなくてすむ。

今集中したいのは、君のことだけ。

耳に入るのは昨夜ダウンロードしたばかりのロックチューン。
目をつぶり携帯をぎゅっと握った。


あと、二駅。
二駅。

君に会えるまで二駅。


腕時計によると、
時刻は午後5時32分
ちょうどいい時間だ。

もしこのまま作戦通り進むと、
あと二駅で君はこの車両に
左側のドアから乗ってくるはず。

乗ってきて、席がどのくらい空いてるか確認し、
本をカバンから取り出し、
イヤフォンを耳にし、読書に励むだろう。