────スパァーーーンッッ!!!






竹刀の音が響く。




「一本!!勝者、八王子 時雨!!!!」






「「「キャーーッ、時雨様〜〜〜♡♡」」」


うるさ……耳が壊れるんだけど……




「八王子、剣道世界一7回目おめでとう!!


先生も鼻が高いぞ♪」


アンタが勝ったんじゃあるまいし、
何でアンタが鼻が高ぇんだよ……




「えー、今年の剣道世界大会も


七年前から引き続き八王子時雨さんです!


いやー、本当凄いですよね!!


これからも八王子を応援しましょう!!!


以上、○○テレビより生中継でした!!」



記者も騒ぐんじゃねぇし………









「時雨〜、おめでとっ♪♪」




『ん、あぁ、伊織………。』


唯一信頼できる友達、長瀬 伊織。




「剣道も世界一だし、ホント凄いよねw


他に何があったっけ??」



ええと…………他には………



『………空手、柔道、レスリング、


ボクシング、フェンシング、陸上、


テコンドー、少林寺拳法……etc』



「………聞くんじゃなかった……w


ごめんごめん、時雨はそうだったねww」



っ……………伊織は優しい。


自分が気にしてる事を上手く


誤魔化してくれる。


だから伊織だけは心開ける。






「ただ、ホントびっくりなのはさ、





















………時雨が女の子だってことだよねww」











……………はい、そーです。


あたし、女でございますww



よく中性的な顔をしてると言われて、


昔から男からも女からも告白の嵐w


女の人ー、あたし、女だけど?


と、思いながらww


男は皆振った。



だって……今は、アイツ以外誰も

好きになれない………。


あ…………やべ。

嫌なこと思い出した……。

逃げてんのにこれじゃ意味ないじゃん。



………ちくしょお…………。

あたしに、力があれば…………………。







暫く伊織とはなし、控え室に入る。






…………それにしても、さ。












この世界は腐ってる。


どいつもこいつも自分の事しか考えない。


自分が感じる憎しみを人の


せいにする。



…………かと言って、自分が一番そうなくせに。

結局のところ自分が一番憎い。


あの時こうすれば、あの時あぁしておけばと

考える度無念の憎しみが心を支配する。






──────何処か、人が……………

人が、人のために生きる世界へ行きたい。














ふとそう思った瞬間、あたしは光に包まれ、

意識を失った────













時雨が居た場所には、時雨に関係する

物すら消え失せていた────