「そういえば」


秋人がいなくなってから、私は本間の方を振り向く。


「…結城は?」


そこに結城の姿がなかった。


「ああ。なんか、保健室」

「え?何で?」

「うーん、恋の病」

「……はあ?」

「愛ちんは罪な女だよ」

「何で私なの」

「ツーン」


そう言いながら、本間はぷいっと顔を逸らして一切話を聞いてくれなかった。
ツーンって。言葉にするモノですか、それ。

…よくわからないんですが。


結城、恋の病って。
それ、仮病じゃん。

保健室いていいのか。
お前、学級委員だろ。


はあ。まあ、いいか。
結城いない方が実際静かだし。



その日、結城が現れたのは午後になってからだった。


カラっとした元気な声で、

「わりー、ばっちし寝てた!」

と言ってクラスの笑いを取っていた。


私もそんな結城を見てたから、目が合った時何か言おうと思った。
だけど、ばちっと目が合ってすぐに結城は目を逸らした。


それは、絶対に勘違いじゃないと思う。


まあ、いっかあ。と思いながら私は次の授業の準備をした。