「何で?」

秋人はそう言いながら、あたかも乗るのが普通かの如くメットを私に渡す。


「…死にたくない」

「は?」

「事故って死にたくない」

「………」

秋人は目をまん丸にした後、腹を抱えて大爆笑をし始めた。
いや、秋人。
何も面白くない。
私は至って大真面目だ。


「いやー愛ちゃん、俺中学生の頃から姉貴に無理矢理乗せられてたから大丈夫だよ」

「余計心配です」

「まーいいから、乗ってみてよ」

「…無理です」

「……そんな信用ない?」

秋人が眉を下げて、少し寂しそうに言う。
だが、私はコクンと頷いた。

てかね、出会って初日で信用しろってどんなもんよ?
そんなん全て信用してたら、壺とか絵画とか、買わされまくりでしょ。私。


「…愛ちゃんは、本当…」

ぼそっと呟くと、秋人はバイクを降りるとハンドルを握る。


「じゃー俺、押すから歩いて行こう」

「……わかった」

「愛ちゃんって、前の学校で男子に恐れられてたでしょ」

「はあっ!?全然ないし」

てか、前の学校でこんなに怒ったりした事ないし。
あんた達が常識外な事するからだ。