「愛ちゃん、待って」


後ろから秋人が追いかけて来るけど、

「ふん!」

と、鼻を鳴らして、私はシカトして歩いて行く。


後ろでクスクスと笑い声がするけど、それもシカト!
もう、シカト!


「愛ちゃん、顔真っ赤」

「……誰の所為だあああ」


漫画とかなら、きっと私の頭から角生えてるよ。
それで、牙とかも生えちゃってて、かなり怖い形相の筈だ。


「愛ちゃん」

「……」

「あーいちゃん」

「……チッ」

「舌打ち!愛ちゃん!あはっ」

「………」


どんどん墓穴を掘ってる様な気がするのは気の所為だろうか。

いや、多分。
気の所為じゃない。


「愛ちゃんーあーいちゃん」

「………」


さっきから、大声で呼ばれる私の声。

歩く人、歩く人。

全てがこっちを見てる様な気がする。
寧ろ、見てるな。クスクスと笑われてる。


ぴたっと足を止めると、うおっと声が直ぐ後ろから聞こえた。