「…秋人」


何、その情けない顔。
眉を八の字にして、今にも泣きそうじゃん。

その顔…こっちまで胸が痛むじゃん。


「どっか遊びにでも行く?」


首をふるふると振って、秋人は私の腕を掴むと距離を詰める。
何も言わないまま、後ろからきゅっと私を抱き締めた。


すっぽりと秋人の腕の中に収まる私。

微かに震えている様に感じる秋人の手。


「ちょっとだけ。だから…」


周りにたくさん人が通ってるし。
拒否しようと思えば。
きっと一言放してって言えば。


秋人は放してくれたはずだ。


でも、そうしなかったのは。


秋人が今にも壊れそうだったからだ。