「絶対そんな事ないのになあ」
そう言いながら、秋人が私の手を取って絡める。
反対の手で、机にあった私のカバンを持つ。
私が何か言うより先に。
「まあ、いっか。行こうか、愛ちゃん」
「うん」
秋人と他愛ない会話をしながら、帰る帰路は正直楽しかった。
この感情は嘘ではない。
秋人から出る会話は豊富で、私よりも様々な経験をしてるんだってわかったし。
それに相手を楽しませる事に長けているから。
これじゃ、一緒にいたら好きになるのもうなずける。
その日はどこにも寄らず、真っ直ぐに私の家へと向かった。
「秋人、ここでいいよ」
今朝、待ち合わせした交差点に差し掛かった時に、私がそう言った。
秋人から、自分のカバンを受け取ろうとするが、秋人は手を離さない。



