「秋人、いつ来たの?」
「え?愛ちゃんが来る少し前」
「嘘」
「嘘じゃないよ、本当」
「じゃあ、何でこんなに手が冷たいの?」
「…寒くなって来たからじゃないかな」
そう、真面目に言ったのに、秋人は目を細めて笑う。
いつもの笑顔じゃない癖に。
顔がぎこちないよ。
そんな秋人に奥歯を噛み締める。
「はぐらかさないで」
「……」
「いつから来てたの?」
「わかんない」
「はあ?」
わかんないって。
わかんない程に早く来てるって事?
時間は見てないわけ?
様々な疑問が浮かんでは消える。
秋人は一向に口を開こうとはしない。
「…風邪、引くって…」
私はぽつりと呟く様に言った。
こんなに手が冷えてるって事は、身体だって冷えてるはず。
片手を取ると、両手で包み込む。
少しでも温かくなる様に。
「…愛ちゃん」
そう、独白する秋人がふわりと空いてる腕を回して私を抱き締める。
その身体は、やっぱり冷たい。