冷たい上司の秘密の誘惑

「何も終わってないのに?」

「・・・え?」

…何も終わって、ない?


「美穂はオレに別れるなんて言ってない。

オレだって、美穂に別れるなんて言ってない。

だから、俺達の関係は、何も終わってなんかいない」


篠田部長の言葉に、返す言葉はない。

自然消滅。そんな感じかもしれない。

確かにお互い、別れると言っていないし、メールのやり取りもしていない。


私が一方的に、篠田部長の前から姿を消しただけ。

しかも、好きなまま、彼の前から消えたのだ。

…実際、私はまだ、篠田部長に気持ちは残したままだった。


「でも、会わなくなって何か月たったと思ってるんですか?

連絡すらしなかったのに、恋人同士なんかじゃないじゃですか。

…それに、私は三谷先輩と、あんな事」

そう言って俯いてしまった。

これ以上口にできなかった。

だって、不可抗力でも、したことは事実だから。

篠田部長に非はない。


「確かに驚いたよ、腹が立ったよ」

篠田部長の低い声にビクッとなる。

明らかに怒っているのが分かったから。


「でもな、誠から事情はすべて聞いた。

したことは事実でも、美穂が起きてる状態でそれを受け入れたわけじゃないだろ」