冷たい上司の秘密の誘惑

「プッ…嫌われてるな、光世」

店主は豪快に笑った。


「・・・久保、お前の本心はよ~く分かった」

「・・・」

篠田部長の言葉に、返す言葉もない。

逃げれるものなら逃げたい。でも、出来ない、鞄はやっぱり、人質。


私と篠田部長は、カウンター席に座り、

ビールを頼む。

それが来ると、私はサッとビール瓶を持ち、篠田部長のグラスに注ぐ。

これは仕事よ、食べればさっさと帰ります。

そう何度も自分に言い聞かした。


「おい、久保?」

「なんれすか、篠田部長?」


「・・・お前酔っただろ?」

「まさか!そんなわけなじゃないれすか」

「・・・」

篠田部長は、私がお酒に弱い事を知らず、お酒を飲ませた。

…と、言っても、たった2杯。酔う量でもないのだが・・・

「大将、また来るよ、コイツ、連れて帰らないと」

「アハハ、2杯で酔うなんてよっぽど、お酒が弱いんだね。

ちゃんと、送り届けてやれよ」


「わかってますよ」

篠田部長は私を支えながら、大通りに出て、タクシーを止めた。