冷たい上司の秘密の誘惑

ここを動くな?・・・ここに来るつもりなのか?

大体、今どこにいると言うんだ?

ただ今の時間午後9時を少し回ったところ。

美穂はもう、とっくに家に帰っているはずなのに。


ガタッ!

その物音に、体がビクッとなる。

そして、物音がした方に、視線を向けた。


「はぁ・・・はぁ・・・」

息を切らせた美穂が入口に立っていた。

・・・さっき、電話を切ってから、まだ5分も経っていない。

一体どこから来たと言うのか?



「篠田部長」

息を整えながら、オレの名を呼んだ美穂。


「…どうして、ここに来た?」

そう問いかける。いつものような口調で・・・。

「さっきの言葉の意味が分からないからです」

美穂は少しずつオレに近づいてくる。



「・・・さっきの言葉はそのままの意味だ。

…大体、どこから来たんだ?もう家に帰ってたはずだろ?」

「いいえ、今の今まで上の階にいました。

・・三谷先輩と一緒でした」

三谷先輩と一緒。・・・その言葉に、胸がギュッとなる。

じゃあ、さっきの電話の時も一緒にいたに違いない。