冷たい上司の秘密の誘惑

【光世side】

…開いた口が塞がらない状態だった。

オフィスでまだ仕事中だったオレは、誠の電話の内容を聞いて、

頭を何かでゴツンと叩かれたような気になっていた。


噂は、オレの耳にもすぐに伝わってきた。


美穂と誠が付き合っていると。

四六時中一緒にいるんだから、そんな噂があってもおかしくない。

実際、この部署にいた時だって、二人は仲が良かった。


自分の気持ちを伝えられないまま、

その気持ちだけがくすぶっていた。その想いさえも、

美穂に届くことは無くなった。

自分が今までしてきた罰なのかもしれない、そう思った。


…仕事は終わったと言うのに、その場から動けない自分がいた。

椅子に座ったまま、携帯を見つめる。

その画面には、消せなかった美穂の携帯番号が映っていた。


今更何を言うつもりだ?

おめでとうって?

それとも好きだったって?

何を言えるわけでもないのに・・・

それでも、美穂の携帯を呼び出していた。



「・・・もしもし?」

美穂の可愛らしい声が、耳に聞こえた。

…何日ぶりだろうか、美穂の声を聞くのは。

声を聞いただけで、胸が高鳴った。