冷たい上司の秘密の誘惑

三谷先輩はクスリと笑った。

「もっと自分に自信を持て。美穂は大丈夫だ。

何だってやっていける、オレが保証するから」

そう言った三谷先輩は、私の頭をポンとした。

・・・その行動にキュンとなる。

三谷先輩はとてもいい人。優しい人。

きっと三谷先輩なら、私をうんと幸せにしてくれるだろう。


・・・何を迷っているの?

それが分かっているのに、三谷先輩の胸には飛び込めない。

この行き場のない想いのせいで、私はその場から動けそうにない。


「本当に送らなくていいのか?」

居酒屋を出て、三谷先輩に言われた。


「大丈夫です、ここからそんなに遠くないし」

私は笑顔でそう言った。


「…分かったよ、じゃあ、気をつけて帰れよ」

三谷先輩はそう言って溜息をつくと、私に手を振り、帰っていった。


それを見届け、私も家路につく。

ここから家までは一駅だった。

今夜は歩きたい気分。そんな思いで街の中を歩いて帰る。