冷たい上司の秘密の誘惑

『美味しいご飯作っておきます』

…まだ数名、オフィスの中に社員が残っていた。

その数名も、篠田部長に言われ、帰り支度の最中。


私は誰にもバレないように、紙の端にそう書いた。


篠田部長は、ニッコリ微笑むと、

「気をつけて帰るように」

そう言って、自分のデスクに戻っていった。


私は一足先に、オフィスを出る。

「久保さん、お疲れ様」

「あ、お疲れ様です」

同じ部署の先輩に声をかけられた。


「篠田部長、本当に凄い人よね、自分が一番大変なのに、

部下の事を心配して、こうやって返してさ」


「そうですね」


「久保さんって、篠田部長の事、よく知ってるの?」

その言葉にドキッとする。


「ま、まぁ、本社にいた時の、上司でしたから。それなりには」

「そうなんだ。いいな~、あんなイケメンの上司がいてくれて、

頑張れたんじゃない?」


「ハハ・・・どうかな~?

私には、スッゴク厳しい上司でしたから、正直。

あまり好きじゃなかったかもしれません」

…最初は本当にそうだったから。