「え、片目?」
「へ?」
ゆらの言葉で、私は頭を熟睡モードから切り上げた。
「ちょっと、林檎、あの新入生代表さ、眼帯してる!」
ゆらは興奮しながら隣の席の私に話しかける。
ちょっと…いま、入学式の途中だよ?
そんな声でしゃべったら、先生に怒られるに決まってんじゃん…。
私はちょっと顔をしかめて、舞台の上の新入生代表の顔を見た。
「ね!眼帯してるでしょ!怪我したのかなぁ?でも、イケメンだよね!」
ゆらの声を聴きながら、私は自分でもびっくりするくらい驚いていた。
「どうしたの?林檎?そんなに眼帯めずらしい?」
違うよ、ゆら、私が驚いてるのは、眼帯じゃないんだよ。
ゆらにそう言いたいけど、口が動かない。
舞台の上にいたのは、私にあの言葉を教えてくれた、あの人――坂口伯夜(さかぐちはくや)その人だった。