「圭介くん、お誕生日おめでとー! 10時47分、圭介くんが誕生した瞬間ですよー♪」


それは僕すらも覚えてない情報だった。
何故知っているのか彼女に聞きたかったが、どうせ答えは見えていた。


「…そんなに厳密に誕生日を祝われたのは初めてだ」


「今回は、そこが重要なんですよ!」


彼女はドヤ顔だ。


「…どういうことだ?」


「私はさっき、圭介くんとの…その、キスを急いでいました。何故だかわかりますか?」


彼女は真っ直ぐに僕を見て問いかけた。


「わからん」


「ちゃんと考えてください! 答えは、圭介くんはまだ未成年だったからです! 未成年のうちに彼女とクリスマスを過ごして、恋人らしいことをしたいっていうお願いを、ちゃんと叶えられました♪」


坂井さんはえへへと笑う。なんだかその姿は、とても可愛らしかった。


「そしてですね…、ここからが本題なんです!」


彼女は今度はわくわくした顔をしている。


「なんだ?」


「圭介くんさっき、何て言いました?」


待ち遠しそうな顔で彼女は僕を見つめた。


「わからん」


「ちゃんと思い出してくださいーっ」



「いや違う。『わからん』って言ったんだ、さっき」


「…はっ。いや違います!もっと前です!」


彼女は一瞬、納得したような表情をした。


「えー…思い出せんぞ…」


「ほらプレゼントがどうとか、どっちかっていうととかほら!」


もう答えを言いたくて仕方ないといった顔だ。
その顔は、なぞなぞを出す子どもの顔を想像させた。


「あ、あー。どっちかといえばあげる側ってやつか?」


「そう!それです! 私の言いたいこと、わかりました?」


彼女の目が輝いた。


「いや、全然」


「うぐぐ…以心伝心は難しいな…。つまりですね、私が言いたいのは…」


彼女はピシッと僕を指指した。


「圭介くん、あなたにサンタになってほしいんです!」