Epilogue.
引継における注意点を、僕は上の空で聞いていた。
これから帰ったら何処に行こうか、何を話そうか、そんなことばかりを考えていたのだ。
「圭介さん、聞いてますか!?」
「え、あぁ、すみません。もう一度お願いします」
「全く、もう一回しか言いませんからね。引継の際の注意点です」
「まずは、後継者候補となる方一人ひとりに、自分はサンタであると名乗ること。後継者候補が後継者候補に選ばれたと伝えること。そしてあなたたちが受けたような、サンタ活動について説明すること」
「…はい。了解しました」
「それから圭介さん、これはあなたに限ったことですが」
指導サンタは念を押すように僕に言った。
「…はい?」
「あなた、次の後継者候補は女性よね。サンタ活動の引継をしている間は、後継者候補とは恋愛関係にならないこと。良いですね」
……!
「…破った場合、どうなるんですか?」
「罰則は特にはありません。ですが、あなたを不適合者としてサンタクロースの権利を剥奪し、他のサンタクロースに引継の代理を委任します」
「それは、その人とは永遠に恋人にはなれないってことですか?」
「いいえ。サンタ活動をしてもらう上で重要な期間となる引継の際にそのようなことがあると支障が出ることが予想されるため、禁止されているだけです。だから引継の後であれば問題ありません」
…そうか。『サンタ活動の引継』の間の恋愛が禁止されているだけなんだ。
つまりサンタ活動のことを全然知らなかった、引継以前の状態の時の"アレ"や、引継が終わったあとのさっきの"アレ"は、範囲に含まれてないってことだ。
