12月25日
午前2時36分。
「終わったー!」
「本当にお疲れ様、圭介くん」
ありがとうという彼女の心の声が聞こえてきそうな表情だった。
「美咲先輩こそ、忙しいなかありがとうございました。ほんと、お疲れ様です」
「ありがとう…。 …ねえ、圭介くん、知ってる?」
彼女は幸せそうな顔をしている。
「何をですか?」
「サンタクロース活動のことは、他人には話しちゃいけないんだよ。」
「…知ってますよ?最初に先輩が説明してくれたじゃないですか」
美咲さんの話の先が僕には見えなかった。
「…うん。だからね、今日のことは二人だけの思い出なんだよ…? 圭介くんとそりに乗ったの、楽しかったなぁ♪」
彼女はそう言って笑顔を見せた。
「美咲…。先輩。僕も、楽しかったですよ。美咲先輩と一緒にそりに乗れて」
「そっか♪ 良かったぁ♪」
僕も知らぬ間に、幸せな気持ちになっていた。
彼女の幸せな気持ちが、僕にも映ったようだった。
少しの沈黙が流れる。
どこか心地よい、幸せな沈黙が数秒という時間を刻んだ。
「いやしかし、これでやっと全部終わったね!」
そして彼女はそう僕に話しかけた。
「まだ僕には仕事残ってますけどね…引継が」
「…そうだったね。それじゃあ私は先に帰ってるからさ。最後の仕事、頑張ってね」
美咲さんは祈るように目を瞑る。
「夜が明けたらデートですよー」
「しゅっ、就活あるもん!!」
「この時期に?」
「う…わかったよ…。するよ、デート」
彼女は下を向いた。
「…そんなに僕とのデート、嫌ですか?」
「…私、最初にも言ったじゃん。勘違いしないでよねって。別に、後継者探しをもう一回しても良いんだよって」
彼女は、ゆっくりとそう言った。
「え?だってそれは営業って意味じゃ…。…あっ!」
「……気づいた?」
「…逆じゃん、全く逆じゃん」
僕は完全に、それを逆の意味で捉えていた。
「…気づくの遅過ぎ。私はさ、圭介くんのこと、ずっと好きだったんだよ。私は今でも、今までも、圭介くんの彼女だよ。…一応」
「そして今からも…ね」
そう言って、彼女は僕の頬にキスをした。
「………!」
「…じゃあ引継、頑張ってね!私、サンタ卒業した圭介くんを待ってるから!」
「…おう!ささっと引き継いで、すぐ向かうよ!待ってて!」
「うん!」
彼女は幸せそうに笑い、そして歩いてその場を去った。