「ふつうは?」
その言葉が引っかかり、僕は美咲先輩に訊き返した。
「…私は、後継者候補を1人しか確保できなかったので、残りも圭介くんとともにがんばります」
美咲先輩はしゅんとして答えた。
「…そですか。助かります」
「いえ…」
「ところで、美咲先輩」
「なんでしょう?」
美咲先輩は首をかしげる。
「僕たち、付き合ってるんですよね?」
「ずいぶんと急ですね…。私は、あなたの彼女ですよ。一応」
美咲先輩はびっくりしたような顔で答えた。
「でも、一回も恋人らしいことしてない気がするな、僕」
「したじゃないですか! 最初に…」
美咲先輩の顔が赤く染まっていく。
「あれ以来、何もないですよね? 美咲先輩、今度、デートしませんか?」
「そんな暇があるなら、サンタデーに回してください…」
ついに先輩は俯いた。
「んー、じゃあ、終わったら」
「終わったら…?」
下を向いていた美咲先輩は、少し顔をあげて僕を見た。
上目遣いになった彼女はやっぱり可愛らしくて。
「サンタ活動が終わったらさ、デート、行きましょう」
自分の声とは思えないほどの優しい声で、僕は提案していた。
「あ、えと…。ひっ、引継があるじゃないですか! 6ヶ月間は忙しいですよ!」
「それは美咲先輩が、後継者候補を1人しか用意しなかったからでしょ? もし、12月までに後継者候補が3人全員残ってて、ちゃんと引継ができたら、なら良いかな?」
僕はそう言って笑う。
「う…っと、そ、そのときまた誘ってください!!」
机に隠れてここからは見えなかったが、美咲先輩は自分の膝の上の手を握りこぶしにするような仕草をしたのだろうか。肩に力が入っていた。
「…はい。わかりました。」
僕は優しい気持ちになっていた。
