僕と美咲先輩は僕の家から出て、街へと向かうことになった。
普段通らない道のせいか、美咲先輩は何度も僕のほうを振り返りながら進んでいた。


「山崎先輩ー! 後継者候補連れてきましたー!」


街灯の立ち並ぶ、人通りの決して多くない通り。
美咲先輩は僕をそこまで連れて行くと、一人の女性に声をかけた。


「おっそいぞー、美咲。何してたんだよ」


「すみません、説明に手間取って」


と、頭を下げる美咲先輩。


「ふうん、あんたのとこ男か。珍しいね」


山崎先輩と呼ばれた女性は僕を見た。


「あ、はい。圭介くんです。絶対良いサンタさんになりますよー♪」


美咲先輩は両手を伸ばして僕を紹介する。
僕は会釈した。


「へえ、それじゃ、うちの後継者候補紹介しとくわ。ほれ」


「中本です」

「佐々木です」

「安藤です」

「榎沢です」


4人の女性がそれぞれ挨拶をした。


「や、山崎先輩…?」


美咲先輩に良くない雰囲気が下りる。
それは動揺している顔だ。


「ん?どした?」


「後継者候補は1人に絞るんじゃ…」


美咲先輩の顔が青くなっているのがわかった。


「は?何言ってんのあんた? 後継者候補たった一人じゃプレゼント代賄えないだろ」


「え、えええー! で、でも先代のとこで、私以外の後継者候補見たことなかったですよー!」


「あー、そりゃ、後継者候補同士は合同研修以外関わっちゃいけないことになってるからな…」


「でも!合同研修なんかやったことないですよぉ…」


美咲先輩は涙目になっている。


「あんたんとこの先代、城だったよな? あの男は面倒なことはとことん嫌う奴だったから、合同研修実施の書類出すのが面倒でやらなかったんだろ」


山崎先輩はあきれ顔でそう言った。


「な、なんでそんなひとがサンタさんになってるんですか…」


「そこまでは知らん。なったもんはしょうがない」


「う、うう…情報ない人は結局損するんだ…いいですよーだ。わたしは圭介くんと死ぬ気で働きますよー」


美咲先輩は地面にへろへろと力なく座り込んだ。


「ちょっ、僕巻き添えすか!」


「あなたは候補者なんだから、もともと働くんです!!」


涙目の美咲先輩は僕をきっと睨んだ。


「でも美咲先輩がちゃんと話聞いてたらもっと楽だったわけじゃ…」


「す、過ぎたことはしょうがないじゃない! 覚悟してよ圭介くん!」


「…はあ、わかりましたよ」


山崎先輩は僕と美咲先輩を面白そうに見ていた。