ぼんピー

「うぅ……っ。別にオレは野球ができればどんな環境でも関係…………って、そんなことはどうでもいい! 今はあの女の話をしてんだよっ!」


 開き直った好は、下の練習着を勢い良く上げてベルトをキッチリ締めて叫んだ。


「うーん。でも悪い子には見えなっかったけどね。パンツ覗いたりセクハラ発言連発の好ちゃんを笑って許してくれてたし……」


「良く思い出せ! その前にライダーキックやモンゴリアンチョップをしっかり食らわされてるからなっ! あの暴力女を聖母みたいに語るんじゃないっ!」


「でも許してもらった時嬉しかったでしょ?」


「あ、あの時はオレの野望の華の高校生活計画を、邪魔されなくてホッとしただけであってだな……っ! け、決してあいつのことを良い奴だなんて思ったわけでは……っ」


「好ちゃーん! 早くしないと先行っちゃうよー!」


 制服をたたんで整理整頓し終えた要は、好の話を全く聞かずに部室を出ていってしまっていた。


「あっの野郎~っ! しかも、よく考えたらあいつも一緒に覗いてたじゃねぇかっ!」


 怒りに怒りが重なり、またもや足をドタバタさせだした好だったが、さらに怒りが重なる出来事がおこる。


「うお……っ」


 ドサッ!と、好の足踏みの振動で棚から落ちてきた段ボール箱。


「あぶね~なっ。……ん?」


 小さい怒りが重なった所で、段ボール箱の中から溢れていた物に目が止まる。


「バッティング手袋? どれもボロボロだな……」


 両手を広げてやっと持てる大きさの箱の中には、使い物にならなくなったバッティング手袋が一杯に詰まっていた。


「しかっし量がすごいこと――」


「好ちゃーんっ! 本当に先行っちゃうよーっ!」


「お、おう! 分かった分かった!」


 箱を元の場所に戻して、急いで要を追いかけた好だった。