「はははっ、よせよせ要(かなめ)。てか、オレが言った通り、歩きにして良かったろ?」


 先ほどからいの一番に奇声を発し、うるさかった好と呼ばる男がハイテンションで勝ち誇っている。


 好の顔は、目尻が下がり、口の端が上がっているにやけ顔状態であり、平凡そうな顔が、なんとも残念な顔に仕上がってしまっている。


「うん、自転車通学だったら、こんな絶景拝めてなかったよ」


 そして、好と並んで歩く要と呼ばれた男は、整った顔をしており、ややたれ目ながら優しそうな大人の雰囲気を漂わせている。


 好と違い要は、感情を表に出すことを最低限に控えているため、好ほど周りから変な目で見られておらず、それどころかむしろ……。



「い、痛っ。な、何で急に肩殴るの、好ちゃん!」


「いや、またお前だけ良い思いしてる気がして……ついな」


「い、良い思いしてるのは同じじゃんか!」


「…………もういいよ」


 要は自分のモテっぷりを自覚していないらしく、好もその事を知っているのか、バツが悪そうに黙りこむ。



「……(ズンタカズンタカ)」


 取りあえず好は、ぶつけようのない怒りを奇妙な踊りで発散させた。