「え?でも、じゃあさ、なんで風志が睨まれてたの?」

「…え?」



二戸は眉毛をハの字にする。



「だって、風志が女ならわかるけど」


手島が俺を、睨んでいた訳。

…女はそういうことには鋭いのだ。






「…そりゃあ、まあ、俺とお前よくつるんでるし…嫉妬じゃね?」





頭のなかで、急いで言葉を探す。

嫌な考えが一度頭をよぎった。



「…んー」


二戸はまだ納得していないようだった。


「…そんなもんなのかねー」

「ほら、んなことより早く写せよ。授業始まる」

「えっいいの?やった」


二戸は俺のノートを受け取ると自分の席に戻っていった。


その後ろ姿を見て、安堵のため息をついた。











俺は、二戸が好きだ。






自覚したのは、一年も前のことだ。



きっと一生叶わない恋をしてしまったと、ひどく絶望した。



それでも、この一年俺は二戸と変わらず友達でいることを選んだ。

むしろ、時が過ぎていくにつれて俺たちの間はただの友達より深まっていった。



ただ、俺が望むのはそんな関係ではなかったけれど。








手島は気づいているのだ。





二戸に告白するつもりなど、毛頭ない。


いい友達でいたい。





せめて、あと3ヶ月。



卒業するまでは、なにがなんでも今の関係を崩したくない。


二戸を、失いたくない。






俺のこんな想いなんて、俺だけが知っていればいい。

俺だけの、心にあれば、それでいいのだ。




それなのに、手島のあの視線は、困る。



二戸にばれないように手島を睨む。

すると手島も気づいて睨んできて、しまいにはあっかんべをしてそっぽ向いてしまった。




あの女…





手島は俺が二戸を好きだということを知っている。




…やっかいだ。