ボーイズ・ビー・アンビシャス



「もう帰るだろ?帰ろーぜ」

「おー」


案外あっさり帰る二戸について、学校を出る。

駅までの道は、同じだ。




「卒業式」

「ん?」

「俺、泣いちゃったなー」

「ふっ、鼻が赤いぞ」


忠告すると、照れたように笑う。


「なんか、普段はどーでもいいような言葉がさ、いい言葉に聞こえんだよな」

「それ俺も思った」




道行く生徒に二戸は何度か声をかけられている。



人気者、さすがだ。


きっと多くの生徒の記憶に、二戸は残るのだろう。


俺とは違う人種だ。




「すごいな、お前は」

「えーなんでだよ」

「きっと、何人もの"高校時代の記憶"にお前は残るんだろうな」

「はあ?」


俺がそう言うと、二戸は不思議そうに首を傾げた。


「それだけの個性とか、インパクトがあったんだよ、お前は。多くの人間の記憶に残るなんて、凄いことだ」



俺にはないものだ。

だから、二戸は見ていて飽きない。




「俺は…」

「なんだよ?」

「俺は、お前の記憶に残ってたいよ」

「は……」




意味がわからなく、呆然とする。




「みんなの"なんとなく、バスケうまかったなーあいつ"っていう記憶より

お前の記憶にしっかりと残ってたい。
バスケが上手くて、人気者で、風志と仲良かった、二戸って。

その方が嬉しい」


「………」



なんだ、それ。



「お前のことは……忘れるわけねえだろ」



声が震えないか。

少しでも、違和感がないか。



精一杯振り絞った言葉は、そっけないものだった。


「…だよな」



それを聞いた二戸の声が、ほっとしているように聞こえたので、よけいに泣きたくなった。



そうしているうちに、駅に着いてしまった。


ここからは逆方向だ。



「二戸」

「おう」






手島こずえの言葉を思い出す。





自分に正直になってみなよ。




「二戸…俺は」






好きだ。


ずっと。


ずっと前から。




たったその一言なのに。






「………俺は、お前のこと一生忘れない。最高の、友達だって」





言うと、二戸はいつものように笑った。




「俺もだ、風志」






自分に、正直に。



なれるわけ、ないじゃないか。





「じゃあ、またな」

「うん、また」





背を向けて歩き出す。



これが一生の別れではない。


これが一生の別れではないというのに、なぜこんなにも悲しい。

さみしく思うのだろう。