解散したはずのクラスには、まだ何人も生徒が残っていた。
写真を撮ったり、アルバムに寄せ書きを書いたりしている。
みんながみんな、帰るのを躊躇っているようだった。
無理もない。
きっとこのクラスの半数は、地元から離れる。
これから一生会うことのない人だっているだろう。
三年間同じ空間にいたとしても、そういう人間はいる。
この三年間。
俺は何を思って、何を得たのだろう。
人生において、三年なんて短い時間だ。
しかし、高校時代の三年間ほど、密な時間もないだろう。
きっとみんな、この三年間で自分が何を得たのか。
何をして、どんな時間を過ごしたのか。
忘れないように、確認するように、写真を撮ったり寄せ書きを書いたりして、記録に残しているのだろう。
では、俺は?
「風志」
振り返ると、二戸が立っていた。
鼻が赤い。
泣いたのだろう。
「書けよ、ここ」
差し出された卒業アルバムは、既に文字でびっしりだった。
「どこにだよ、人気者」
「ふふーん、お前の場所はちゃんととってあるんだぜ?」
そう言って指差したのは、あろうことかアルバムの表紙だった。
「え、いいよ、こんなとこ」
「んだよ!書けよ!いいから」
「えー…」
渋々マジックペンを受け取る。
特に気の利いた言葉も思いつかなかった。
"お前のおかげで楽しかった。ありがとう。"
右端に小さく書いた。
本心だ。
「ふっ、ひねりねーなあ!まあそこがらしいけど」
「うるせー、どうせつまんない人間だよ」
「んなこと、言ってねえよ。お前のも貸せ」
そう言って俺のアルバムを奪い取る。
「…全然書いてねーじゃん」
「…お前と比べんな」
しょーがないな、とカラカラと笑って二戸は自分の油性ペンを取り出した。
見ようとすると、拒まれたので、何を書いているのかわからない。
少し悩んでから、何かを書き込むと、俺に向き直った。
「いいか?家帰るまで見るなよ?絶対だぞ」
「何書いたんだよ」
「ひっみつー」
「まあ、いいけど…」
二戸からアルバムを受け取る。
見るなよ?と、しつこく念押しされた。
帰り際に見よう、と思った。


