「あれさ、あのあとにまだ続きがあるんだよ」
「へえ、そうなんだ」
二戸はたまにこうして雑学を披露する。
どこで仕入れてくるのかは知らないが、なかなかバリエーションも豊富である。
「少年よ、大志を抱け。で、始まるだろ」
「うん」
「それから、金を求めたり、利己的な大志ではいけない。
有名になりたいとか名声を求めるような大志ではいけない。
人間として、すべてのものを求める大志を抱け」
「なんか、すごいこと言ってる気がする…」
俺が言葉を読み取ることが苦手なことを知っている二戸はからからと笑い、わかりやすく解説をはじめた。
「まず、最初はわかるだろ?
金を求めたり、利己的…自分勝手な大志ではいけない。
有名になりたいとかも自分勝手に入る。
わかんないのはそれからだよな?」
「そう。人間として…なんだっけ?」
「人間として、すべてのものを求める大志を抱け。
クラーク博士が一番言いたかった言葉がこれだ」
「それがよくわからん」
二戸は俺の苦手分野を自分が理解しているからか、上機嫌なようだった。
得意げに腕を組む。
「ふっふー、風志くん。それはね、こういうことなのである」
「わかりやすく説明して」
「まかせろ。
例えば、俺は総理大臣になりたい、とする。
総理大臣になるということは、大きなことだよな?それ相応の努力や経験を積まなければ、なれない。
立派な志だ」
「その前にお前の頭じゃなれねーけどな」
「いまそこは論点じゃない。」
ぴしゃりと言い返される。
熱弁モードである。
俺はしぶしぶ、聞き手に徹する。
二戸は満足そうにうなずく。