「風志もよく試合見に来てくれたよな。ありがとな、あれ、助かるんだ」

「いいよ、俺もバスケ見るのは好きだし」

「でも風志が来てくれた試合って大体勝てるんだよな、お前持ってるんだって」

「何を」




にやっと笑って、二戸は俺を指差す。




「運」





向けられた指をはらう。




「運」

「うん」


バシッ


もう一度奴の頭に参考書を落とす。



「いてぇ」
「つまらん」




運。

そんなもので、受かるような大学じゃない。


「受験生なめんな」

「へーい」



二戸はそれから興味をなくしたように他の友人のところへ駆けていった。


明るくて、背も高く、スポーツのできる二戸は学校でも人気者である。



大会も受験も終わったし、という理由で染めた明るい髪は奴によく似合っている。



二戸の周りは既に輪ができており、楽しそうな笑い声が聞こえてきた。






…陽のもとに生まれて来たような男だ。






俺は学内の友達は決して多いほうではない。


簡単に言うとネクラだ。


そんな俺と二戸が仲良くなったのは、ほとんど奇跡に近いものだと思う。