手島のすこし驚いた顔を見て、罪悪感を感じた。
「ごめん…」
「ううん。わたしも無神経でした。ごめんなさい」
手島こずえは性格もいい。
二戸と付き合ったら、ベストカップルになるだろう。
そんなことを考えていたから、手島の表情が歪んだことに気づかなかった。
「…っ」
「え、手島さん?」
手島こずえは泣いていた。
なにがそうさせたのかはわからない。
ただ、声を殺して大きな瞳からぼろぼろ雫をこぼしていた。
「っ…れた……」
「え?ごめんもう一回」
「だからっ…ふられたの…」
目を真っ赤にさせて、手島はそう言った。
「二戸に?」
「ほかに誰がいんのよ…」
初耳だった。
俺と二戸は自分の恋愛話はあまりしない。
俺に関してはそういう出来事がないからだが、二戸もあまりそういう話は好まなかった。
モテるというのに、ここのところは彼女も作らない。
「いつ…?」
「試合の後」
街でもらった固いポケットティッシュを手渡す。
思いのほか音をたてて鼻をかんだ彼女に多少驚く。
鼻も目も真っ赤だった。
「いけるって思ったの。仲良かったし、優しかったし。でもだめだった」
「……」
意外だった。
手島と二戸は俺から見ても仲がいいなと思ったくらいだ。
鈍感の俺が言うのだから間違いはない。