実花さんの言葉は気になったけど、先生を見る。


「なんで、来たんですか。」


「小泉のお父さんから連絡が来て。」


「学校はいいの?」


「桝谷先生に任せたし。」


「そっか……」


 なんか、ちょっと嬉しい。


 そんなことを思っていると。


「小泉、実花と、何があったんだ?」


そう言われた。


「……だいぶ前。登校中の電車で会ったの。手紙もらって、その中に、先生に抱きしめられてる写真があって。」


 先生に、ゆっくりと話した。


「……それで、先生を辞めさせるなんて言われた。だから、話しかけないこと。殴られることになった。あたしは、あたしは……」


「守ろうとしてくれたんだ、俺を。」


 先生は、あたしの頭をポンッと軽く叩いた。


 泣きそうになる。


「うんっ……だって、先生には苦しんでほしくなくて。悲しい思いしてほしくなかったの……」


「うん……」


 涙が溢れて、止まらない。


「あたしは、そのためなら何だって我慢できた。殴られても。死んでも、先生を守りたくて……」


「……俺は、その気持ち凄く嬉しい。けどな、お前が幸せじゃないと、その我慢も無駄だ。」


 どういうことだろう。


「どういうこと……?」


「生徒の、いや、生徒じゃなくても、お前は俺にとって特別なんだよ。だから、小泉の笑顔を見たいんだ。」


 先生の顔は、赤くて。

 その言葉の意味と、顔は、あり得ないことを考えさせられる。