ダメだと分かっていたけれど。



 その笑顔の裏に、何を溜めていたんだ?


「お前、なんで……」


「せっんせ……」


「えっ……」


 幸せそうな顔の小泉は、寝言でそう言った。


「池谷先生……」


 俺?

 そして、小泉は信じられないことを口にした。


「池谷先生……好き、だよ……」


「っ……」



 好き?


 いくら寝言でも。


 こんなこと言うのは、おかしい。


 俺がそう思うだけかもしれないけど。



 でも、どっちにしろ、俺の理性をふっ飛ばすには、十分で。


 ヤバい、可愛すぎる。


 あぁ、もう止められない。


 ずっと、気づいてたんだ。

 この、想い。


 小泉にだけ感じてた気持ち。

 小泉にだけ見せたい自分。

 小泉を、ただの生徒としてもう、見れない。

 いや、ずっとそんな風に見たことなんてなかった。

 変な独占欲を持ってしまっていた。


 小泉に伝えたい想いがあって。

 小泉に会いたい気持ちがあって。


 だから、避けられるのが嫌なんだ。


 実は、こんな気持ちは初めて。

 女にこんな想いは持ったことなかった。

 だから、小泉のことを気にしてる。

 小泉のことだけを想ってる。


 俺は、小泉のことしか考えられない。

 溢れる気持ちは、言葉に出来ない。

 でも、とめどなく溢れていく。


 なあ、小泉。

 もしも、今の言葉が嘘でも。

 きっと嘘だけど。

 今から言う言葉は嘘じゃないから。


 小泉、


「俺も、好きだよ……」


 ゆっくりと、小泉と自分の顔の距離を近づける。

 あと、10,9,8,7,6,5,4,3,2,1……
 もう、唇が重なるまで数mm。