ダメだと分かっていたけれど。




 2時間位、走った。


 足もクタクタで、息も荒い。


 ……俺、死ぬかも。


 やっと病院に着いた。


「あの、こっ……小泉、蛍さん、は……?」


「501号室です。」


 ナースセンターで小泉の病室を聞く。


 そして、再び走り出そうと思ったが、ここは病院。


 走ったらダメだから、早歩きで向かった。


 ガラッ


 病室のドアを開けると、寝ている小泉がいた。


「小泉……」


 幸せそうに、寝ている。


 でも、目が腫れていて、口も切れて血が固まっていた。


 布団から出た右手も、アザだらけ。

 きっと、全身がそうなってるんだろう。



 何故、こうなってるのか。


 昨日の涙は、俺にSOSを出してたのか?


 なんで、何にも気づかなかったのだろう。


 なんで、何にも聞かなかったのだろう。

 あの時、小泉のことを考えて黙ってた。

 でも、聞いとけばこうなることは無かったのか?


 こんなにも痛々しい体になりながら、一人で守ってたものって、なんなんだ?


「……んーっ……」


 小泉は、やっぱり幸せそうに笑っていた。


「小泉……」