ダメだと分かっていたけれど。




「どうかしましたか?」


 桝谷先生が、不思議そうに聞いてきた。


「うちのクラスの小泉蛍が家の前で倒れてて、病院だそうです!!俺、行くんで、俺のクラス宜しくお願いします!!」


 上着を羽織りながら言った。


「了解です、気を付けて」


「じゃっ。」


 俺は荷物を持って、走った。


 家が近いからって、車も自転車も乗ってきてない。

 ……走るしかない。


 でも。


 さっき聞いた病院は、市を二つ挟んだ所。


 電車乗るか?


 でも……


 結局俺は、走ったのだった。



 なんで、だ?


 昨日、小泉は泣いていたけど、体は大丈夫だったはず。


 ……いや、明らかに殴られたようなアザが掴んだ腕にあった。


 もしかして、虐待?

 いや、あの、優しそうなお母さんがしないだろう。

 じゃあ、お父さん?

 うーん、電話越しの動揺はすごかったし。

 違う気がする。


 じゃあ、誰にされたんだ?


 ……分からない。


 小泉は、何を考えてんだ?

 俺を避けてるのに、関係あるのか?

 何を経験し、何を守ってるのか。

 何にも、分からない。



 俺には。