放課後。


 絶対に小泉は帰る。


 だから、急いで教室に向かった。


 思っていた通り。


 小泉は荷物をまとめて帰る気満々。


『げっ……先生……』


『ったく、俺は話が……』


 そう言った時。


『お願い、もう、話しかけないで……』


 小泉の、震えた声が耳に響いた。


 なんでだよ。


『嫌。』


『お願い、先生のためなの……』



 どこが?


 小泉の、悲しそうな声。

 悲しそうな顔。

 辛そうな言葉。


 お前が幸せそうに笑ってくれれば。


 また俺と話してくれれば。


 ……十分だ。


 俺を避けるなんてのは。


『……俺のため?』

『そうだよ。だから……』


 思わず、小泉を抱きしめた。


 俺を避けるなんてのは。


『お前が、無視するかぎり、俺のためにはならない。』


  逆効果なんだよ。