俺は、小泉と話したいと思った。


 だから、居残らせた。


 小泉は俺が話しかけたことに驚いていて。


 『幻覚』なんて言っていた。


 いつもと変わらないとぼけっぷりに、笑ってしまった。


 けれど、ハッと何かに気付くと、歩き出した。


 慌てて俺は、小泉の腕を掴んだ。


『……離して下さい。』


 心底嫌そうに小泉は言った。


 でも、隠せてない。


 いきなり俺を嫌うなんてこと、いくら小泉でもあり得ない。


 絶対何かあって。

 それに俺が関わってるのかは分からないけど。


 必死に俺に隠しているのは見え見えだ。


『嫌。』


 俺は、いつかの小泉のように言った。


 小泉は、悲しそうに俺を睨んだ。


 あぁ、抱きしめてぇ……


 バカか。


 居残りだって言うと、小泉は無理だって言う。


 でも、今日は負けねえよ。


『ダメだ。何があろうと居残りだ。絶対に教室を出さないから。』


 そう言って、俺は小泉の手を離した。