ダメだと分かっていたけれど。




「まず、どうしてこうなったの?前から?どれくらい……」


「母さん、焦り過ぎだ。時間はたっぷりある。俺も、しばらく会社を休むことにしたし。ゆっくりと、三人で話そう。」



 さっき、落ち着いたように家族会議を提案したお母さんが、いざ、始まると、間も取らずに話して来た。



「……そうよね。」


「お母さん。」


 あたしは、真っ直ぐお母さんを見つめた。


「あたし、度々呼び出されてたの。その度に、男の人に殴られて……」


「殴られてた?今回が初めてじゃなかったの?」


「学校の人か?」


 お父さんも、質問をしてきた。


「ううん。正確には、学校の人の知り合い。」


「……理由は分かるの?学校の人じゃないなら、何かあったんだろうし……」


「……今は、言えない。」


「何故だ?」


 お父さんが、あたしの言葉に驚いたように言った。



「守りたいから。大事な人なの、今言うかどうかで、もしかしたらその人を傷つけるかもしれない……」


 先生を守るため。


 家族に打ち明けるため。


 あたしなりの、精一杯だった。



「……どうして?私達にも言ってくれないの?いくら大事だからって、蛍は殴られてるのよ……!!」


 お母さんは、顔を両手で覆い隠し、泣いたようだ。


 お父さんは、そんなお母さんの背中を撫でてなだめながら言った。


「蛍にも、守りたいものがある。俺らもそうだろう?」