ダメだと分かっていたけれど。



お母さんは、あたしを確認すると、声を荒げた。


「蛍!!」


「お母さん……」


「あなた、なにしてっ……怪我は!?だいじょ……」


「大丈夫、あたしは。」


 かぶっていた布団をどけて、慌ててあたしに近づこうとするお母さんに対して、あたしは落ち着いた口調で言った。


「そうね……お母さん、なんだか落ち着かなくて。ごめんね。」


「あたしの方こそ……迷惑かけて、ごめんなさい。」


「迷惑だなんて……ねぇ、きちんと話しましょう。家族みんなで。」



 家族っていうものは。


 一番近くて。

 気づけば、当たり前のように傍にいる。


 でも、一番相手を知っている気がするけれど、一番分かんないもので。


 当たり前のように傍に居るからこそ、きちんと相手を見れてない。


 だから、気づいたら、いつの間にか、大事なのに自分で傷つけている。


 ……そんな、もの。



 それに気づかないで、失いたくない。


 だからたまに、自分の意見も、相手の気持ちも聞いて、向き合わないといけない。


 大事だから。


 大事だからこそ、話し合うことも必要で。



 今が、あたし達小泉家にとって〔その時〕なのかもしれない。


「……そうだね。」


 あたしは、それでも先生のことは話せない。

 大事だけど、絶対無理なんだ。

 でも、お母さん達をこれ以上悲しめたくない。

 苦しめたくない。


 どうするべきか。

 迷いながら、家族会議が始まった。