お母さんは、何度も流産して、子供が出来なかった。


 ただでさえ、不妊治療でえらかったのに。


 そんな中、やっと産まれたのが、あたし。


 なのに……




 先生のために。


 そう思って自分を犠牲にしてきた。


 でも、あたしはあたしだけのものじゃない。

 あたしが辛かったら、お母さんも、お父さんも辛い。

 あたしは、こんなにも愛してくれている両親までもを犠牲にしたんだ……



 ……なにをしても、上手くいかない。



 少し、心が揺らんだ。



 本当に、このままでいいのか。


 このままじゃ、あたしも辛い。


 実花さんに、なにをされるか分かんない。

 周りのみんなを傷つけたくない。

 もしかしたら、他に先生を守れる方法があるかもしれない。



 でも、でも、でも、でも。



 やっぱり、いい案が浮かばない。



 ガラっと、お父さんがドアを開けた。


 目の前には、開いたドアに驚いてこちらを見る、お母さん。


 目の下は、ひどく腫れている。


 その姿を見て思う。


 お母さん、ごめん。

 ごめん、ごめん、ごめん……


 本当に、ごめんなさい。