あたしもすごいな……


 先生のためにここまで出来るなんて。


 今は、褒めていいよね……



「蛍」


「あっ、お父さん。」


「ほい、ここに乗れ。手伝うから。」


 あたしは、お父さんが用意した車いすに乗った。


 あたしが乗ると、お父さんは車いすを引いて、どこかに行った。





 着いたのは、またも一人部屋。


 ドアに吊るされてあるネームプレートには、『小泉あや子(こいずみあやこ)』という、患者の名前。


 あたしの、お母さんだ。





 ……なんで?




「お父さん、これ……」


「お母さんが、お前を見つけたんだ。で、びっくりし過ぎて倒れてしまったんだ。今も、落ち着かないみたいだ。」


「あたしのせい……」


「俺はな、怒っている。意味、分かるか?」


「……あたしが、深夜に家を出たから?」


「違う。そんな姿になる前に、お父さん達に相談しなかったからだ。」


 えっ……?


「家族なのに、たった一人の娘なのに、守れなかったっ……」


 そう、声を震わしてお父さんは言った。


 そういえば、聞いたことがある。