救急車に乗り込んで、サイレンの音を聞きながら目をゆっくりと閉じた。
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「……んっ……」
目を開けるとそこは、消毒液のツンッとした匂いに、ガラガラという音。
そして、白い天井。
きっと、もう病院なんだ。
この、上に乗る暖かい布は、ベットの上ということ。
つまり、病室。
あたしは、上半身を起こした。
あたしのいる部屋は一人部屋のようで、辺りは、テレビ台以外は何もない、殺風景だった。
……でも。
隣には、パイプ椅子らしきものに座って寝ているお父さんがいた。
「お父さん……?」
あたしが声をかけると、お父さんは目を開けた。
「あぁ、起きたか……」
「ねえ、お父さん。お母さんは?」
ずっと、お母さんの姿が見えない。
「……ちょっと、来い。」
そう、意味ありげに言うと、お父さんは車いすを用意しに病室を出て行った。
あたしは、布団をめくって、全身を見てみた。
手も足も、包帯だらけ。
頭が、痛む。
患者服をめくると、殴られたお腹には大きなアザ。
きっと、顔も酷いんだろうな。
痛々しい姿。
ううん、本当に痛い。