でも、半信半疑で聞いた。


『誰?』


『生徒ですよ、小泉蛍っていう。』


 やっぱ怪しい……


 でも、瞬が教師って知ってるなんて……


 いや、でも瞬の生徒かも……


『信じられませんか?なら、証拠、いつか見せます。』


 そう言って、少年は歩いて行った。





 それから少し経って。


 通勤中の電車で、話しかけられた。


 あの、少年に。


 『久しぶりです。』


『何?証拠でも見つかって?』


『はい。これ、渡しておきますね。』


 少年に差し出されたのは、1つの写真と、電話番号が書いてあるメモ。

 おそらく、少年の電話番号だろう。


 写真をよく見ると。


 瞬が、可愛い女の子を抱きしめていた。


 その瞳は、優しくて。


 きっと、この子のことだったんだって。


 実感した。


 私を、こんな風に抱きしめてくれたこと、あったかな?

 それ以前に、抱きしめられたこと、あったかな……?


 この子が、瞬の大事な子。


 私の、何倍、何十倍、何百倍も。

 大切な、子。


 だから、許せなかった。


 どうせなら、ぶち壊してやる。


 あの子の、笑顔も。

 瞬の、笑顔も。

 幸せ、すべてを。


ゆっくりと、携帯にメモの番号を打つ。


「……もう、許さない。」