ダメだと分かっていたけれど。




 結局、悩んだまま放課後になった。



 ……もう、思い切りダッシュして帰ろう。


 あたしは、鞄に教科書を詰めた。


「よし、かえろ…」


「おい、なにしてんだ?」


 この声は……


「げっ……先生……」


「ったく、俺は、話が……」


 ダメ。


 もし、スパイが見てたら……?


「お願い、もう、話しかけないで……」


 先生を、守りたいのに。


 これじゃ、意味が無い。


 そうだ。

 初めから、そう言えば良かったんだ。


「嫌。」


「お願い、先生のためなの……」


「……俺のため?」


 先生は、低い声でそう言った。


「そうだよ。だから……」


「ふざけんなっ!!」


 先生が、今までで一番大きい声を出した。


 そして……


「ひゃっ……」


 グッと引っ張られたと思ったら。

 先生の、懐かしい温もりの中へ。