久しぶりすぎて、一瞬誰だか分かんなかった。


 誰か分かっても、あたしは目を疑った。


「……幻覚……?」


「何言ってんだよ。」


 目の前の人は、笑っていた。


 あたしにだけ見せられた、笑顔。


 涙腺が、緩んだ。


「せんせっ……」


 目の前にいた先生に、思わず抱きつきそうになった。


 ダメだ。


 今まで、我慢したんだから。


 あたしは抱きつきそうな自分を、止めて、先生を無視した。


 そのまま歩いた。


 と、しようとした。


「待てって。」


 先生に、肩を掴まれた。


「……離してください。」


「嫌。」


 大分前のあたしみたいに、先生ははっきりと言った。


「小泉、今日居残りだから。」


「はぁ?」


 居残り?


 そんなの、二人きりに……


「無理です。」


「ダメだ。何があろうと居残りだ。絶対に教室を出さないから。」