あたしは、ゆっくりと振り向いた。


「……!小泉、おまっ、なんで泣いて……?」


「……っ……」


 あたしは、ダッシュで走った。


「おい!!小泉!!」


 先生の声を、背中で聞きながら。


 思いっきり走った。




 先生、先生、先生……




 ガラッ


 あたしは、教室のドアを開けた。


 みんなの視線が、あたしに集まった気がした。


「おー、蛍ー♪……って、ちょっ、なに泣いてんの!?」


「……ぅう~……」


 あたしは、声をかけてきた真心に抱きついた。


「……蛍……」


 先生、先生、先生……


 先生のことで頭がいっぱい。


「先生……」


「……蛍……」


 真心は、全てを悟ったかのように、あたしを抱きしめてくれた。



 先生を、想う。

 でも、それ以上に先生の幸せを、想いたい。


 そんな人に、なりたいのに。


 あたしはどうしても、ワガママなんだ。