「まあ、こんなことしてるんだから、ただの生徒と先生じゃないと思うけど。」


「実花さんが思ってるような関係じゃないですよ。先生は、あたしのことなんとも思ってないだろうし。」


「どーでもいいわよ、そんなこと。」


 今までの、どの実花さんより怖い声で、実花さんは言った。


 針のような、声。


「ねぇ、あなた次第じゃ、これを学校に出すわよ。」


「……」


「あなたはいいけど、こんなの校長にでも知れたら、瞬、学校に居れなくなるわよ。ううん、教師も出来ないかも。」


 実花さんは、笑いながらも、怖い口調だ言った。


「……どうしたらいいんですか。」


「フフッ、蛍ちゃんには、ちょっと我慢してもらうだけよ。」


 悪魔のような笑みを見せながら、実花さんはそう言った。


 そして……


「金輪際、瞬に近づかないで。話さないでね。それと、たまに電話するから、その時は、よろしくね。」


 実花さんはそう言うと、店を出て行った。



「……」


 手を一切付けてないカフェラテを見て思う。



 もう、二度と先生と話せないの……?


 当たり前だけど、先生に抱きしめてもらうことも、笑い合うことも出来ない。


 まだ、先生を想っているのに、こんなの辛すぎるよ……

 それに、電話が来たとき、何言われるんだろう……

 でも、あたしが我慢しないと先生は……


 大丈夫、先生のため。先生が、先生でいられるために。


 あたしのこの想いは、捨てよう。

 先生のため。


 あたしが先生を、大好きな人を守るんだ……